大手監査法人は「上場会社を減らし、1社あたりの報酬を上げている」
公開日:2026/10/03 | 会計監査データベース運営事務局
この記事のポイント
- PwCを除く大手3法人の「金商法・会社法監査」の担当数は、2022年の2,429社から2026年は2,107社へ−13.3%。
- 一方で同じ3法人の監査売上は+20.6%と伸び、1社あたり監査売上はあずさで+31.9%上昇。
- 上場企業に占める大手4法人の社数シェアは66.5%→57.1%に低下したが、監査報酬シェアは86.3%→84.0%とほぼ維持。大手は「数」を手放し「大企業と単価」を守っている。
上場会社の監査は減っている、それでも売上は伸びている
監査法人が毎年公表する「業務及び財産の状況に関する説明書類」には、契約種類別の被監査会社数が記載されています。このうち上場会社を中心とする「金商法・会社法監査」の件数を2022年から2026年まで並べると、あずさ・トーマツ・EY新日本の3法人はそろって減少しています。あずさは724社から594社へ−18.0%、トーマツは−13.3%、EY新日本は−9.2%です。
出典:各監査法人「業務及び財産の状況に関する説明書類」。トーマツは5月期、他は6月期の期末現在。
ところが、同じ期間の監査売上は3法人とも17〜24%伸びています。担当する上場会社が減っても売上が増えているということは、1社あたりの監査報酬が上がっていることを意味します。実際、1社あたり監査売上(監査売上÷被監査会社数)は、あずさが2,454万円から3,235万円へ、トーマツが2,655万円から3,268万円へと上昇しました。
1社あたり監査売上=監査売上÷被監査会社数(全契約種類)。
| 監査法人 | 金商法・会社法 2022 | 同 2026 | 増減率 | 監査売上 増減率 | 1社あたり監査売上 増減率 |
|---|---|---|---|---|---|
| EY新日本 | 865 | 785 | −9.2% | +16.6% | +12.6% |
| あずさ | 724 | 594 | −18.0% | +24.1% | +31.9% |
| トーマツ | 840 | 728 | −13.3% | +21.4% | +23.1% |
| PwC | 142 | 201 | +41.5% | +65.9% | +41.4% |
PwCだけが逆方向に動いている
PwCは例外で、金商法・会社法監査の件数は142社から201社へ+41.5%増えています。ただし2023年12月にPwCあらた有限責任監査法人がPwC京都監査法人を吸収合併しており、2024年6月期以降の数値には旧PwC京都の担当会社が含まれます。合併による上積みを除いても、PwCは担当会社を増やしながら単価も上げており、大手3法人とは異なる成長局面にあります。
上場企業データで見ても「数は減り、報酬は残る」
有価証券報告書から集計した上場企業ベースでも同じ傾向が確認できます。上場企業に占める大手4法人の社数シェアはFY2022の66.5%からFY2026には57.1%まで下がりました。一方で監査報酬のシェアは86.3%から84.0%とほとんど変わっていません。市場区分別に見ると、大手4法人の社数シェアはプライム市場で83.0%→80.6%とほぼ横ばいなのに対し、スタンダード市場では52.7%→40.8%、グロース市場では60.0%→41.7%と大きく低下しています。
出典:各社の有価証券報告書(EDINET)から本サイトが集計。市場区分は各社の現在の区分で分類。
示唆:大手は「選別」と「値上げ」を同時に進めている
大手監査法人は、規模が大きく報酬水準の高いプライム市場の企業を手元に残しつつ、相対的に報酬が低く工数のかかる中小規模の上場会社を手放しています。背景には、監査基準の高度化による工数の増加、人手不足と人件費の上昇(平均給与は4法人とも16〜25%上昇)、品質管理の強化があると考えられます。上場会社にとっては、監査報酬の値上げ要請や、監査人の交代を検討せざるを得ない局面が今後も続く可能性があります。監査人の交代の実態は、別記事「上場企業の『大手離れ』」で詳しく分析しています。
※ 本記事の数値は、金融庁EDINETの有価証券報告書、各監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」、日本公認会計士協会の公表資料をもとに本サイトが集計したものです(2026年10月時点)。会計年度(FY)は決算期末基準の4月始まりで表記しています。正確な内容は各一次資料をご確認ください。