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上場企業の「大手離れ」:監査人の交代は大手→中小が15倍

公開日:2026/10/03 | 会計監査データベース運営事務局

この記事のポイント

  • FY2023〜2026の監査人の交代729件のうち、大手→準大手・中小は370件、逆方向は25件。交代はほぼ一方通行。
  • 大手から中小へ交代した会社の監査報酬は交代前後で−26.6%。同じ監査法人が続けた会社は毎年+5.9%上がっている。
  • 大手から移った会社の交代理由(複数該当)は、監査報酬への言及が89%、事業規模に見合った体制が81%。値上げに対する「規模に見合った監査人」への乗り換えが中心。

交代はほぼ一方向に流れている

上場企業の有価証券報告書を前年度と比べ、監査法人が変わった会社を数えると、FY2023からFY2026の4年間で729件の交代がありました(監査法人の合併・名称変更による見かけ上の変更は除く)。このうち、大手監査法人(トーマツ・あずさ・EY新日本・PwC)から準大手・中小監査法人への交代が370件だったのに対し、準大手・中小から大手への交代は25件にとどまります。交代の流れは、ほぼ大手から外へ向かう一方通行です。

監査人の交代件数(方向別)
大手→大手大手→準大手大手→中小準大手・中小→大手準大手・中小間
060120180240222FY2023199FY2024112FY2025196FY2026

大手=トーマツ・あずさ・EY新日本・PwC、準大手=太陽・東陽・仰星・三優。年度は新しい監査法人が監査した会計年度。

交代すると監査報酬は約2割下がる

交代前後で監査報酬を比べると、大手から中小監査法人に移った会社では−26.6%、大手から準大手に移った会社では−5.9%でした。これに対し、同じ監査法人が監査を続けた会社の監査報酬は、年平均で+5.9%上がっています。毎年の値上げが続く中で、監査人を替えることが報酬を抑える現実的な手段になっていることがうかがえます。反対に、準大手・中小から大手へ移った会社では監査報酬が+51.3%と大きく増えています。

交代前後の監査報酬の変化(合計ベース)
大手→大手+4.9%大手→準大手−5.9%大手→中小−26.6%準大手・中小→大手+51.3%準大手・中小間+3.4%

前年度・交代年度とも監査報酬(監査証明業務・提出会社+連結子会社)がある会社の合計で比較。

理由の記載:「報酬」と「規模に見合った体制」

有価証券報告書には、監査人が交代した理由と経緯(臨時報告書の記載事項)が転記されています。大手から準大手・中小へ移った会社の記載を分類すると、監査報酬や監査費用の相当性に触れたものが89%、「当社の事業規模に見合った監査対応」といった体制面に触れたものが81%、継続監査期間の長期化に触れたものが62%ありました。また、監査法人側から契約の継続を辞退した・人員の確保が困難といった申し出による交代も、全体の10%で確認できます。

交代理由の記載内容(複数該当、全交代)
監査報酬75%事業規模・体制74%継続監査期間59%監査人からの申し出10%親会社・グループ3%

理由の記載を抽出できた交代について、キーワードに基づき本サイトが分類。

示唆:受け皿となる準大手・中小の負荷と品質

大手が単価の低い上場会社を手放し、準大手・中小が受け皿になる構図は、別記事「大手監査法人は上場会社を減らし…」で見た大手の選別と表裏の関係にあります。上場会社の監査の担い手が中小監査法人へ広がることで、受け皿側の人員や品質管理体制の充実がこれまで以上に重要になります。実際、無限定適正意見以外の監査意見は中小監査法人の担当会社に集中しており(別記事「限定付適正は全件『監査範囲の制約』」)、交代先の体制は投資家にとっても確認すべきポイントです。

関連データ:監査人の交代(交代事例と理由の全文を一覧できます)

※ 本記事の数値は、金融庁EDINETの有価証券報告書、各監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」、日本公認会計士協会の公表資料をもとに本サイトが集計したものです(2026年10月時点)。会計年度(FY)は決算期末基準の4月始まりで表記しています。正確な内容は各一次資料をご確認ください。

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