限定付適正は全件「監査範囲の制約」、不適正意見は5年間ゼロ
公開日:2026/10/03 | 会計監査データベース運営事務局
この記事のポイント
- FY2022〜2026の延べ19,402件のうち、無限定適正意見以外は42件。不適正意見と「意見に関する除外」の限定付適正は0件で、限定付適正の29件はすべて「監査範囲の制約」。
- 意見不表明はFY2022〜2025に1〜3件で推移していたが、FY2026は6件と5年間で最多。
- 中小監査法人は監査の24%を担う一方、無限定適正以外の79%を占める。発生率は0.72%で大手(0.06%)の約12倍。
「誤っている」ではなく「確かめられない」
監査報告書の意見には、無限定適正意見のほか、除外事項がある場合の限定付適正意見、財務諸表全体が適正でない場合の不適正意見、監査証拠が得られず意見を表明できない意見不表明があります。さらに限定付適正意見は、監査人が会計処理の誤りを認めた「意見に関する除外」と、十分な監査証拠を入手できなかった「監査範囲の制約」に分かれます。
上場企業の有価証券報告書に添付された監査報告書をFY2022からFY2026まで判定すると、延べ19,402件のうち無限定適正意見以外は42件でした。注目すべきはその中身で、不適正意見と「意見に関する除外」による限定付適正意見は5年間で1件もありません。限定付適正意見の29件はすべて「監査範囲の制約」で、残る13件は意見不表明です。日本の上場企業の監査で問題が表に出るとき、それは「会計処理が誤っている」という判断ではなく、「監査人が確かめられなかった」という形をとっていることが分かります。
監査報告書(財務諸表監査)の記載から本サイトが判定。連結・個別の両方がある場合は厳しい方の意見。
誤りが判明した場合、企業は通常、監査人と協議して財務諸表を訂正したうえで無限定適正意見を得ます。そのため、不適正意見が実際に表明されることは極めてまれです。一方、不適切な会計処理の疑いについて調査が終わらない、取引の実在性を確かめる証拠がそろわないといった状況では、監査範囲の制約による限定付適正や意見不表明になります。根拠の記載には「不適切な会計処理」「第三者委員会」「特別調査委員会」といった言葉が多く見られます。
意見不表明はFY2026に増加
意見不表明はFY2022からFY2025まで年1〜3件でしたが、FY2026は6件と5年間で最も多くなりました。一方、限定付適正意見はFY2022の9件から減少しています。また、5年連続で無限定適正意見以外となった会社が2社(株式会社ウェッジホールディングス、昭和ホールディングス株式会社)あり、同じ論点が長期にわたって解消されないケースもあります。
中小監査法人の担当会社に集中
大手=トーマツ・あずさ・EY新日本・PwC、準大手=太陽・東陽・仰星・三優、中小=それ以外。
監査法人の規模別に見ると、中小監査法人は上場企業の監査の24%を担当していますが、無限定適正意見以外の42件のうち33件(79%)が中小監査法人の担当会社でした。発生率は中小が0.72%、大手が0.06%で、約12倍の差があります。市場区分別ではスタンダード市場が22件で最も多くなっています。
これは中小監査法人の監査が甘い・厳しいということを直ちに意味するものではありません。別記事「上場企業の『大手離れ』」で見たように、大手が手放した会社や、会計上の課題を抱えた会社の受け皿に中小監査法人がなっている側面があり、担当する会社の構成そのものが異なるためです。
示唆:見るべきは「意見の種類」より「根拠」
不適正意見がほぼ存在しない以上、投資家や取引先が注意すべきシグナルは、監査範囲の制約による限定付適正意見と意見不表明、そしてその「根拠」に書かれた内容です。調査が続いている事項や、証拠を入手できなかった取引の規模を確認することが、財務諸表の信頼性を判断する手がかりになります。当サイトの監査意見ページでは、該当会社の一覧と根拠の抜粋、EDINETの原文へのリンクを掲載しています。
※ 本記事の数値は、金融庁EDINETの有価証券報告書、各監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」、日本公認会計士協会の公表資料をもとに本サイトが集計したものです(2026年10月時点)。会計年度(FY)は決算期末基準の4月始まりで表記しています。正確な内容は各一次資料をご確認ください。